看護師サバイバル日記

元・万年主任が看護師の自己啓発、スキルアップそしてサバイバルについてホンネで語ることを目的にしたブログです

院内感染とアウトブレイクの定義

こんにちは! 医療カイゼン委員会です。

 

前回エントリのアウトブレイクについて。

医療安全対策 = 院内感染予防対策! (クロストリジウム・ディフィシル編) - 医療カイゼン委員会

 

アウトブレイク”とは、

一般的には、

疫学的に、ある限定された領域の中での

感染症の集団発生を意味します。

 

 

用語の定義を理解しておくことは

とても有用ですので

今回は医療における

院内感染”と“アウトブレイク”の用語の定義を

復習しておきます。

 

まず“院内感染”からです。

 

院内感染”の定義とは

  • 医療機関において患者が原疾患とは別に新たに罹患した感染症
  • 医療従事者等が医療機関内において感染した感染症

のこと。

 

 

(平成26年12月19日

厚生労働省医政局地域医療計画課長からの

医療機関における院内感染対策について」

別記「医療機関における院内感染対策に関する留意事項」より)

 

この「医療機関における院内感染対策に関する留意事項」

(以下、【留意事項】とします)には

さらに詳細に書かれています。

 

最後にイメージをまとめますので

まずはサラリと読んでみてください。

 

【留意事項の3-1】

アウトブレイク”の定義とは

(原因微生物が多剤耐性菌によるものを想定)

 

一定期間内に、同一病棟や同一医療機関といった

一定の場所で発生した院内感染の集積が

通常よりも高い状態のことです。

 

各医療機関は、

疫学的に“アウトブレイク”を把握できるように、

日常的に菌種ごと、

及びカルバペネム耐性などの

特定の薬剤耐性を示す細菌科ごとのに

サーベイランスを実施することが

望ましい、

とされています。

 

そして、各医療機関は、

厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)などの

全国的なサーベイランスデータと比較し、

自施設での感染症の発生が

特に他施設に比べて多くなっていないかを、

日常的に努めることが望ましい、

とされています。

 

加えて、

医療機関での感染症アウトブレイクは、

平時からの感染予防、

早期発見の体制整備

及びアウトブレイクが生じた場合

又はアウトブレイクを疑う場合の

早期対応が重要となる、

とされています。

 

 

ということは、

要するに、

他の病院と比べて自分のところで

発生件数が目立って多い場合

それはアウトブレイクだと考えてください!

ってことです。

 

これらの院内調査をせずに万が一、

アウトブレイク”が発生すると

適切な対応ができていなかったと

考えなければなりません。

 

【留意事項の3-3】では

介入基準の考え方及び対応も書かれています。

つまり“アウトブレイク”をどう判定し、

そのときにどのように対応すべきか、です。

 

各医療機関は【留意事項の3-1】の

アウトブレイク”の定義に沿って

独自に判断し、遅滞なく必要な対応を

行うことが望ましいが

以下の基準を満たす場合には、

アウトブレイク”の判断にかかわらず、

アウトブレイク”時の対応に準じて院内感染対策を実施すること。

 

アウトブレイクの基準とは

1例目の発見から4週間以内に、

・同一病棟において新規に同一菌種による感染症の発症症例が

 計3例以上特定された場合

・同一医療機関内で同一菌株と思われる

 感染症の発病症例(抗菌薬感受性パターンが類似した症例等)が

 計3例以上特定された場合

ただし、

カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)

バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)

多剤耐性緑膿菌(MDRP)

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE

及び多剤耐性アシネトバクター属の5種類の多剤耐性菌については、

保菌も含めて1例目の発見をもって、

アウトブレイクに準じて厳重な感染対策を実施すること、

とされています。

 

繰り返しますが、

この基準を満たす、ないし

満たさなくても、

これはアウトブレイクかも、って思ったら

アウトブレイクと考えて対応しましょう!

そして

そうしないと大変なことになりますよ!

ということです。

 

もしもアウトブレイクに対して

感染対策を実施した後でも発病が多いようなら、

速やかに地域の他の医療機関の専門家に支援を依頼したり、

管轄保健所に報告すること、

と書かれています。

 

これも裏を返せば、

専門機関、保健所に支援依頼、報告をしなければ

あとで責任を追及されるということです。

 

ですから、

院内感染って

言うまでもなくもちろん

患者さんにとって

危険なことですが、

同時に

病院にとっても非常にリスクのある事柄なのです。

 

というわけで

医療安全対策=院内感染対策と言っても

過言ではないくらい重要なことなのです。

 

非常に硬く書かれていますが、

要するに、

感染が流行ってきたら

アウトブレイクと思って

対応しなさい!

ってことです。

 

「大したことないでしょ、きっと」

なんて、甘く見ていたら大変です。

逆に大げさに反応するくらいで

ちょうど良いのかもしれません。

(ただしいつも大げさだと

 過剰な医療になってしまうので

 適切な医療を提供するために

 評価する能力が必要です)

 

そこのところを認識して仕事をすることが大切です。

 

でも、これって

特別なこと、難しいことが

求められているわけではないんです。

 

だいたい、どこの病院でも

院内感染対策マニュアルはあるでしょうし、

300床以上の病院では

感染制御チーム(Infection Control Team=ICT)を

設置することとされています。

 

標準予防策として

手袋、マスク、ガウンなどをこまめに使用すること。

(なんでもかんでも使用すればよい

というわけでもありません)

 

そして、手指衛生

手洗い手指消毒です。

手洗いは石鹸、水道水。

 

WHOでは

速乾性擦式消毒薬による手指衛生

(つまりアルコールシュッシュ)を

5つのタイミングで行うことが推奨されています。

 

WHOの“Clean Care is Safer Care”

“Five moments for hand hygiene”

http://www.who.int/gpsc/tools/Five_moments/en/

でもこれ英語。

なので

サラヤ株式会社さんの「Medical SARAYA」に

分かりやいイラストが載っていますので

貼っておきます。

 

http://med.saraya.com/who/fivemoments.html

 

  • 患者さんに触れる前
  • 清潔/無菌操作の前
  • 体液に暴露された可能性のある場合
  • 患者さんに触れた後
  • 患者さんの周辺の物品に触れた後

 

の5回のタイミング。

 

加えて、

電子カルテやPCなど共有物を触った後にも

是非シュッシュするとさらに有効でしょう。

 

いずれにしても

それだけでかなりの感染予防になる!

って書かれているのですから

これをしない手はありません。

 

患者さんを守る、自分を守るためには

意識して仕事をするのが大事です。

 

同時に

予防は特別なことではなく、

当たり前のことを当たり前にすることで、

そして

決められたことをキチンと守ることで防げるのです

ということを認識して

仕事頑張りましょ!

 

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